両脇に旅館やお店が立ち並ぶ石段街は、情緒があり好きな場所。
訪れた事のある人はご存知と思いますが、石段周辺には比較的小さな駐車場が点在しているが土日には楽に止められる駐車場を探すのも困難。なので、私の場合は、いつも悩まず一番大きい市営駐車場に停めてテクテク歩く事にしている。
実は、ぶーちゃんばあば、じーじと旅行に行った記憶は殆どない。
理由は単純で、生き物を飼っているからである。小規模養豚場とは言ってもピーク時には数百のぶーちゃんが、養われていた環境である。宿泊旅行などは記憶の中でも1・2回で、まして両親そろって出かけたことは一度もないはずである。そんな事を思い出しながら、老人二人とお子様一人を引き連れてゆっくり歩く伊香保の風景はいつにも増して風情を感じた気がする。
ばあばご所望の温泉は、出発前からほぼ決めていた。ご存知の方も多いであろう「石段の湯」である。
伊香保での日帰り温泉の選択肢としては、旅館や日帰り温泉専門の大型施設もあり500円~1,000円程度で手軽に楽しめるが、個人的にはやはりあの佇まいから石段の湯が一推しだと思っている。
利用料金も400円程度と安いので行くとほぼ毎回利用させてもらっている。露天が無いのが唯一残念な点だが、その場合には、源泉側の伊香保露天風呂まで頑張って歩く。今回、ばあば&姉ばあばに意見を聞いた所、石段の湯で良いというので最終目的地は即決である。
あとは、焼きまんじゅうで誤魔化した空腹を埋めるための食事場所だが、その件に関しても私の中では内定済み。駐車場から石段への道を歩きながら、関所や射的場を観光しつつお伺いを立ててみるとこちらもあっさりと受諾。以前から気になっていた「石段うどん」。
食事時に伊香保に来ることが少ない私は利用した事の無かったの青山旅館さんのうどんである。水沢うどんを自分の発案でパスさせた手間、同じジャンルを提案するには多少のリスクも感じたのだが、少なくともコスト面ではこちらの方がお得なハズと口実を用意して訪問させて頂いた(失礼w)。結果、私達一行にとっては大正解と思って良いであろう結果。
ぶーちゃんばあば、姉ばあばとも70を超えても食欲の衰えは無い様で、焼きまんじゅう後の食事であるにも関わらずボリューム満点の「きのこ鍋うどん」を完食。
そして、普段は小食な部類に入る2-1号も私と同じ「肉汁うどん」を注文すると一人でペロリ。味にも満足がいったようで「俺が今まで食べたうどんの中で一番うまかった!」と調子の良い事を言っていた。まぁ、期待を上回る味だったのは事実で案内役の私も一安心となった。
石段の湯は安くて風情ある日帰り温泉
食事中に降り出した雨も、私がタバコを吸って席に戻ると程なくして止んだ為、お店を出て石段の湯を訪問させてただいた。石段の湯は、伊香保石段街を登り始めて割とすぐの場所にあり、一見すると小規模な温泉宿かと思うような外観である。私的には比較的メジャーな施設だと思っているのだが、訪問する度に施設の前で観光客らしき人達が「ねぇねぇどうする?ここって予約とかナシで入って良いの?」と相談している場面を目にする。
なるほど、スーパー銭湯や大型施設に慣れ親しんでいる人達が多くなり、昔ながらの公共浴場スタイルで運営しているこの場所は、利用するにも戸惑うものらしい。だからこそ、未経験者の人には経験して欲しい場所だと思ってしまう。入ってみれば、意外なほどシンプルで温泉以外は少し物足りないと思いながらも、知らない人にはおすすめしたくなる。そんな場所だと思います。
日曜の午後、脱衣所の状態から想像すると浴場は、過去最大級に混雑していた。さっさと服を脱ぐ私の耳に、こういった場所お約束のハプニングを予期させる音が聞こえてくる。
「2-1号!パパは小銭持ってるんかね?」声までの距離推定2.5mmの激近である。暖簾を潜れば脱衣場直通の構造を知るはずも無いばあばにヤバいと感じた私は「大丈夫って言って来て」とパンイチの2-1号を使者に出してなんとか事なきを得る。
大型施設ではない石段の湯の浴場は、想像通り結構な混雑で二人並んで座れるスペースは待たねば出来ない状況。それでも、普段2-1号と二人で温泉に入る時よりも長く温泉を堪能し、ほかほかになって休憩所でぶーちゃんばあば達を待つことにした。だが、待てど暮らせど出てこない。
3人家族の我が家は、温泉施設に行く際に”嫁待ち”を覚悟して入浴する。私も2-1号も温泉が好きな為、多い時には月に4・5回温泉に入る事もあるのだが入浴時間は短いらしい。そこで、嫁が同行する時には最低でも10分は長く入り、20分は待機を覚悟する。そこで、今回も同様に長めの入浴として、湯上りには休憩所で2-1号に飲み物を買い与え、ぶーちゃんばば&姉ばあばが出てくるまでの時間を過ごしていた。が、それにしても遅い。
フルーツ牛乳を飲み干し、暇を持て余しすぎた我が子にスマホを与え、自身は休憩所にあったチラシを手当たり次第に読み漁って時間をつぶす。まさか、私達より早く温泉から上がって石段を観光でもしているのかと施設のデッキに出て外を見渡すがその様子もない。外では「どうするー?ここ普通に入っていいの?タオルとか貸してくれるのかな?」と彼女らしき女性に意見を求められているにも関わらず、勝手が解らないのか戸惑ったまま返答も出来ずにいる若者がいるくらいである。その姿をしばし観察したが、進捗ないことに愛想をつかし私が室内に戻ってから数分後やっとばあば達が現れた。
悪びれる様子もなく「ほんと良い湯だったんねー?」と笑顔で話しかけて来るばあば。30分以上も待たされたので文句の一つも言ってやろうと思っていたが、その満足げな表情をみて止めておいた。思えば、買い物や親戚の所への送り向かえ以外で、じーじが一緒でないばあばの外出に同行するのは初めてだった。
ここは最後までばあばのペースに合わせておこうと荷物を纏めて下駄箱に向かう。出入り口の引き戸を開けると、丁度先ほどのカップルとすれ違った為、思わず心の中で「まだいたのかよ!」と突っ込んだのはここだけの話(笑)。その後、温泉を出ると、食事前から希望していた2-1号の射的というノルマをこなし帰路についた。
結局、じーじとばあばの家に戻ったのは16時過ぎ。私の休日はぶーちゃんばあばに捧げる事となったが、2-1号もばあばも帰って来てからもずっと温泉と肉汁うどんの話をしている。
実の姉、子供、孫と一緒に外出したのが嬉しかったのだろうと思う。じーじも珍しく朗らかに話を聞き相手をしていたが「まだ体が暖けぇんよ~」と言うぶーちゃんばあばの言葉には「そんな訳あるかい!」とすかさず突っ込んでいた。