ベテランの職人さんが、下地を作り、そして塗装したボディーはクリアを吹いた後にそのまま納車できる状態で仕上がるそうです。全工程に四苦八苦しながら素人DIYで板金塗装を行う2号には、とても想像が出来ないレベルの塗装技術です。
そんな凡人の2号が、初めてDIYで板金塗装にチャレンジする人におすすめするのは、クリアの厚塗りと研磨&磨きの仕上げ作業(笑)。そして、重要なのは時間と妥協と言わざるを得ませんが、だからこそ『自分でもDIYで板金塗装が出来るかも!?』そう感じていただけるのではないでしょうか。
DIY板金塗装の磨きには勇気と根気が必要です
クリア塗装を終えればあとは仕上げの磨きのみ!
板金~下地作りをDIYで実践していれば、クリアの磨きに関しても何となく感覚が掴めている頃だと思います。そうです、理屈は難しくありません。
クリア塗装後の磨き工程
その作業は、下地作りからクリア塗装までの中で許容範囲内にあった誤差や不備を整えて修正する事だと考えています。だからプロは必要ないと言えちゃうんですね。
目に見えないほどの僅かな凹凸やクリア塗料の調合時に発生する誤差による塗装後の表面に生じる極小の違和感も、同じ車の補修箇所以外の部位と比較すると簡単に違いが判るもの。その違和感を取り除くのが磨き工程に他なりません。その工程は以下の通り。
- クリアの状態によって1500~3000番の耐水ペーパーで塗装面を研ぐ
- キズ消し~仕上げ用コンパウンドによる磨きで塗装面を鏡面に仕上げる
耐水ペーパーでの水研ぎとコンパウンドだけで塗装面を鏡のように仕上げるのが磨き作業。しかし、失敗すると折角時間を掛けてたどり着いたクリア塗装やベースカラーの塗料を剥がして台無しにすことになりかねません。
ペーパー掛けをする場合・しない場合
クリア塗装後で、最もリスクを伴うのは耐水ペーパーによる表面の研ぎ作業。完全硬化したクリア塗料のデコボコを整える作業です。しかし、やすりでこする訳ですから、過ぎると簡単にクリア層は除去されてしまいますし最悪の場合はベース塗料すらも削り取ってしまうかも知れません。
そこで、作業に入る前のクリアの状態を確認して自分なりに見極めをつけます。クリア塗装後、磨かなくともある程度満足できる仕上がりになっていれば、無理にペーパーを掛ける必要はありません。そのままコンパウンドを掛ける事も可能です。または、殆ど問題ないものの一部に塗料の粒や埃があってその除去のみペーパーを使うこともあると思います。
もし、均一な厚さでクリアを塗装する事が出来ていたとしても、その表面がゆず肌の状態ならコンパウンドだけで仕上げるには相当な時間が掛かると思いますので、やはり先にペーパー掛けする方が良いでしょう。
しかし、磨いた後では元に戻すことはできませんし補整も難しいので、磨き工程に入る前にその方向性を決めるのは重大な決断となります。
プレスラインについて
プレスラインとは、簡単に言うと折り目の事。ボディーの外装は、一枚の鉄板をプレス機で挟んで曲げたり折ったりして形を整えますが、その際に付く折り目のような線をプレスラインと言います。その部分は、研磨をする時に特に磨かれやすく他の部分より深く削れている物。場合によっては、プレスラインにマスキングテープを貼って磨く方もいるようです。
塗装の仕上げ用ペーパー掛け
素人作業のDIY板金を前提と考えた場合、クリア塗装後のペーパー掛けは、程度によって耐水ペーパーの番手を選んだ方が失敗が少ないのではないかと思います。
WEB等で1500番程度から始めて2000番、3000番と進める作業手順も公開されたりしてますよね。当然、塗装前の下地作りで自分自身も行っている作業ですが、自分で吹いたクリア層を同じようにパーパーで研いでいくのはかなり勇気のいる作業。そりゃ・・失敗したらやり直しになるかと思えばビビります。
コンパウンドで鏡面仕上げ
ペーパー掛け後、または塗装後にコンパウンドで磨くのが板金塗装の最終工程とも言えます。作業としては、ペーパー掛けと同じように粗目~細目と徐々に細かくして磨いていく事となります。
仕上げ磨きに使うコンパウンド
- キズ消し用コンパウンド:
3000番のペーパーによる極小の傷を消して磨き上げる素地を作る。 - 細目コンパウンド:
キズ消し用コンパウンドで整えた塗装面を磨いて艶を出していく - 極微粒子コンパウンド:
鏡面仕上げに使える微粒子の仕上げ磨き用
※各コンパウドは、それぞれ適したバフ(スポンジ)を使用しなければなりません。特に、粗目のコンパウンドを使用したバフにそのまま細目を付けて使うなどはご法度です。
仕上げ開始時の塗装面が微妙な場合、コンパウンドでの磨き作業は根気のいるものとなります。そして、素人にとってはどこまで磨いて良いのか見極めるのが難しい、チキンレースとも言えるような作業です。
【注意点】コンパウンドでも研磨されている事を忘れないようにする事。特に肌が荒い状態で「まだ大丈夫」と思ってコンパウンドで磨き続けていると、プレスラインや端面は思いのほか研磨が進み、肌が整う前にクリア層が無くなってしまっている場合があります(過去に経験済みw)。同様にクリア層が思ったよりも薄ければ、塗装面に届いてしまいやはり失敗に繋がります。
コンパウンド磨き3000~7500番
ペーパーに比べて一気に削りすぎてしまう事がない分、作業に時間が掛かるというデメリットがあるのは仕方のない事と捉えて丁寧に作業しましょう。
2号の塗装したボディを磨いているとやはり失敗(?)が露呈する事に・・・。
問題は二つ。
クリアが剥がれる事を恐れすぎて、ペーパーでの研磨が足りず塗装面がゆず肌の状態である事。そして、クリア塗装時のかぶりの影響かピンホールなのか・・・極小の白い粒が浮いてきたこと。塗装面のデコボコを研いだことで、見えにくかった肌の状態が目立つようになったのかも知れません。
しかし、一から再塗装をする時間も気力もないため、そのまま磨きを続けて仕上げる事に決定です(笑)。キズ消し用の3000番コンパウンドが終了したところで磨きすぎる前に細目(7500番)のコンパウンドに移行。
コンパウンドを変更する場合には、合わせてスポンジバフも交換しながら磨いていきます。
コンパウンド磨き9800番~仕上げ
多少の妥協と大きな労力を比較して妥協が勝った2号の脳内。
鏡面仕上げ用である9800番のコンパウンドを掛けている最中もやはり肌の状態は完全には改善されません。しかし、辛うじて恥ずかしくないレベルだろうと自分を納得させてそのまま磨き終了となりました。
9800番での磨き途中の画像を見れば分かりますが、非補修面と補修したバックドアでは明らかに表面の反射具合が異なります。原因は、2号得意の妥協の結果である事に他なりません(笑)。
9800番を終了後の状態がこちら。
この時、仕上げの鏡面用のコンパウンドは2度掛けしています。細目の目消しとして一度しっかりと全体を磨き、全体の様子を確認してからその後軽めにもう一度コンパウンドを掛けた形です。
もっと仕上げに適したコンパウンドがあればそちらを使っていたと思いますが、手持ちは9800番の鏡面仕上げ用と書かれた物が最も粒子の細かいタイプだったので、最後は『少しでもミスが誤魔化せたらいいな』とお祈りする心境で磨いてます(笑)。
自分自身で大成功とまで言える出来ではありません。それでも作業開始前の以前の状態と比較すれば、ずいぶんマシになったのかなと思える程度には仕上がったので一安心のDIY板金塗装になりました。
※各写真は、時間帯と場所が違う為、角度や光の加減で分かり難い部分もあるかも知れませんがご了承ください。
未経験者の疑問と回答:磨き編
勇気と根気が必要な磨き作業。作業前や作業中に2号が考えていたのはこんな事。
自問自答 Q&A
ポリッシャー・サンダー等の工具は必要か?
小さな面積なら不要と考えて良いと思います。しかし、広範囲では極力使った方が良いんじゃないかと考えます。手作業で根気よく磨く事も出来ますがすごく疲れると思いますし、品質的にも高リスクでしょう。高速回転する電ドラにバフを取り付ける選択肢もありますが、多少取り扱いが難しいんじゃないかと思います。サンダーで言えば、シングルアクション(上級者向け)って事になりますし、直角に当てた状態でキープするのも困難です。
バフとコンパウンドの組み合わせは?
見た目じゃわからない事が多いので、ちゃんと調べて買いましょう(笑)。ほとんどの場合で、スポンジバフでも粗目~仕上げの用途別に表示されて売っていますので、必要な物を調べて買えば間違いありません。ちなみに、ウールバフの方がスポンジよりも研磨力が強く、同じコンパウンドを使っても研磨スピードが段違いですので磨きすぎ注意でもあります。
乾いた液状コンパウドのカスが取れないんだが・・
磨き作業に集中しすぎて、コンパウンドの磨きカスがボディの隙間に固着して取るのに苦労した経験はありませんか?(ありますw)ネットで良く見る対応法が有効ですが、固まったコンパウンドに乾く前のコンパウンドを重ねて湿らせることで簡単に取れます。基本は、固まってしまう前にたっぷりの水で洗い流す事がPointです。
おまけ:そもそも塗装~磨きってどのくらい時間が掛かるのか?
2号が初め作業したのがセレナのバックドア。40cm×50cmくらいの範囲でしたが、叩き出しから、塗装~磨きの工程で二日に分けて合計4・5時間くらいだったと思います。いま考えるとなめきってますね(笑)。
ちなみに、今回実施したバックドア全面+リアフェンダー 一枚の塗装&仕上げやり直し作業で2.5日掛かりました。やり直し・・・ってめちゃ大変。
作業内容としては、エンブレム等のパーツ取り外し、前の塗装をサンダーで全て剥がして塗装の下地作り、プラサフまでで丸一日。二日目は簡易的な塗装スペース作りから、ベース塗装とクリア塗装でほぼ一日。仕上げの磨きは完全に塗料が硬化するまで出来ないので、次の週に半日使ってペーパー&磨きという感じです。
DIY板金塗装の手順とコツ・ポイントまとめ
DIY鈑金の世界は広く、素人DIYの板金塗装は長丁場。そして、その解説をおこなったこの投稿もかなりのボリュームになってしまいました(笑)。
2号が実践した感覚では、DIY鈑金の塗装から磨きまで範囲が広ければ広いほど、リスクと作業時の緊張感が増しますという残酷な現実にも直面します。
DIY鈑金の塗装と磨きは失敗すればこれまでの作業が水の泡。勝手な持論ですが、DIY鈑金で失敗するくらいなら、塗装は厚く仕上げる方が良く、磨きはメンタルの勇気と根気が必要な戦いだと言えるでしょう。
プロのように設備が整っていない状態だったとしても、DIY鈑金の世界は大がかりで、それなりに工具や設備、経験と技術が必要になるものだとも実感しました。
それだけに、安易にお勧めできるものではありません。しかし、この記事を読んでくれた方にとって、DIY鈑金の参考になれば嬉しい限り。
無理せず、後悔のないDIY鈑金塗装ができることを願っています。