農家さんが求人募集を考える時。沢山の問題や悩みが付きまとうのではないでしょうか。こちらのコンテンツでは『農家の人材採用』に少しでも役立つ情報を発信したいと立ち上げました。
募集方法(媒体)・求人内容の書き方・面接時の注意点など、農家さんが自分で求人募集を行いたいと考えた時に参考になる実践指南付きで公開です。
何故、農業では人材の採用が難しいのか
自分で出来る農家の人材採用・人材募集がテーマです
どうやって募集すればいいの?
農業に興味を持っている人を探す方法は?
お給料はどうやって払えばいいの?
昔は殆どが家族経営、集落や地域の小コミュニティで完結していたのが農業です。そもそも人材採用の方法やそのノウハウを持っている人が、周囲には殆どいないのが現実です。
そして、採用したい人材にも多くの種類がある事でしょう。出来る限り長く働いてもらいたい場合(正社員や契約社員、事業継承人材)、忙しい時だけや収穫期の定期的な作業協力(アルバイト・パート)など。
更に、法人化されているような組織でなく、家族経営等の小規模農家さんの募集であれば、尚更難しい印象があるかも知れません。
だからと言って、諦める必要はありません。
募集方法や対応、必要な情報を適切にとらえて発信すれば、採用の道が開けるはずです。
農家が自分で行う求人募集について、農家さんの視点、農家さんで働いてみたいと思う人たちの視点から真剣に考えます。
人材募集の方法や手続きに対して、相談する場所も情報も限られている多くの農家さんに現在の人材募集における実勢を含めたリアルな情報をお届けします。
姉妹コンテンツの『農業で働くには?』も公開予定
小規模農業で利用するべき求人募集の種類
このページにアクセスされているのが農家さんなら、猫の手も借りたいと困っている事でしょう。
既に募集を開始されているかも知れません。
2000年代前半までは募集と言えば紙の媒体が当たり前でした。
職種を問わず、求人募集をするなら折り込み広告や求人雑誌に掲載する以外の方法は、あまり知られていませんでした。
当然、ハローワーク等はありましたが、法人として事業所の登録を行わなければ求人の公開が出来ないため、個人の農家で使用する事例は殆どなかったはずです。
現在の求人募集は何が違うのか?
農業人材の募集こそインターネットが大活躍
一口にインターネットと言っても様々な種類・方法があります。
その中でまずお勧めするのが、無料の求人サイト(求人媒体)を活用して募集する方法。
『無料で求人募集なんて出来るの?出来たとしても応募なんて来る訳ないでしょ』
『個人の農家でインターネットを使った求人募集なんて出来るの?』
はじめにその思い込みを捨ててください。
例えば、TVやネットの広告でも有名なindeed(インディード)は、元々海外で生まれたサービスでしたが、掲載無料で求人広告を載せられるという特徴から、あっという間に日本でも浸透しました。
その後、エンゲージや求人BOX等の無料掲載可能なWEB媒体が数多く登場します。そして、2022年現在でも実際に沢山の求人が掲載されています。
勿論、全て無料の広告掲載です。
農業専用の求人サイトもあるんです
実は、農業での求人を専門に扱うサイトもあります。
『農業・酪農求人サイト あぐりナビ』『農業ジョブ』などの有料求人サービスがそれです。
掲載料を払って求人募集を行う場合に活用できるインターネットのサービスですが、初めての人材募集で利用するのはハードルが高いと思う場合が多いかも知れません。
折角申し込みをしたのに思ったように応募者が集まらないとしたら、やはりショックは否めません。
そして、掲載金額や料金形態そのものが個人や小規模な農家さんには馴染みがないのではないかと思うのです。
例えば、掲載は無料でも採用が決定したら手数料として料金が発生する成功報酬型のシステムや求人をクリックされる毎に料金が掛かるサービスです。
当然、求人サイトの運営側がサポートしてくれますが、初めての求人募集で対応するにはちょっとハードルが高い気もします。
こういった媒体は、ポジティブで行動力や交渉力があり、少しでも早く採用したいと考える農家さん向きなのかなと思います。
実際、掲載されている求人をみると、その多くが法人化されている農場や牧場、もしくは大規模農園さんのようにも見受けられます。
その他の募集方法
他にも地域情報誌や掲示板、農場のHPを立ち上げたりSNS等で情報を発信して募集する方法もあります。
更には、その他の方法として、地域の団体や縁故による紹介などを活用する方法は、当然今でも有効でしょう。
しかし、それらは実際の農家さんの方が詳しいに決まっていますので割愛します(笑)。
個人・小規模農家さんなら無料インターネット求人から
いくつかの求人募集における方法を取り上げましたが、全て同時に行うのは現実的ではありません。
そこで、最初に取り上げたように、はじめての求人募集は無料の求人ポータルサイトを活用する事をお勧めします。
具体的にはindeedやエンゲージ、求人BOXなどのWEBサイトです。
無料で掲載できる為、失敗してもほぼノーリスクと言えるでしょう。
あまり農業関係者の利用が多くないので知らない人も多いかも知れませんが、求人への掲載は個人の農家さんやその他の個人事業主でも簡単な登録だけでその日から掲載可能です。
そして、きっと求人情報の登録は思っているほど難しくありません。決められた項目に伝えたい内容を入力していく事で原稿作成自体は可能だからです。
しかし、重要なのは本当に採用できるかどうか。
小規模農家・個人農家(非法人)が求人を出せるか?
勿論、Yesです
筆者自身が行った経験からそう実感しています(笑)
農作業での求人だけでなく、他にも求人掲載を頼まれて職人さんの補助業務や内職さんの募集も掲載し、実際に依頼をして働いてもらった人の合計人数は30人以上にもなります。
ただし、就業を希望する人は、募集内容や地域など様々な要因から応募案件を選定していますので、広告を登録したからと言って何の工夫もなければ採用は難しいでしょう。
農業求人をインターネットで公開する際の強みとコツ
実際の応募を行う前に農業で求人募集を行う場合の強みを考えてみます。
初めての求人募集では、その内容を決定するのに時間が掛かるかも知れません。しかし、何も考えずに実行した成功はあり得ません。
急がば回れと、これから行う就農希望者・農作業希望さんの募集についてしっかりと時間を取って考えてください。
ただし、一口に農業とは言っても生産品目の違いもあれば、酪農と野菜のような業態の違いもあります。そして、規模や個々の農家さんの特徴など様々です。
まずは小規模または個人の農家さんが人材募集を行う事を考えた場合に共通している点を取り上げてみます。
大規模農家さんや農業法人さんの募集に通じるところもあると思いますが、そういった組織の求人募集は、小規模農業者よりも工場や建築土木で求人を行う一般企業さんに近い部分が多いと思うのです。
インターネットの無料掲載と農業求人の強み
農業事業者が個人で無料募集を利用するメリット
- そもそもの競合が他業種より少ない
特に小規模や個人経営の農業事業者求人は少ない為、競合が少なく他の求人と比べ希望者一人に対する閲覧の機会が上がると考えられる。 - 自分で更新できる
業者頼みでないため、時間のある時や気になった時にすぐ更新できる。 - ダイレクトに応募者と話が出来る
応募者さんから直接メールや電話連絡も受けられるので、生の声が聞けるし伝えられる。 - コストゼロで採用活動が出来る
応募人数や掲載期間に関係なくコストが掛からない。
最大の強みは、やはり競合が少ない事。
そして、求人内容を自分で作成する事で、独自性を出したりアピールポイントを的確に伝え、更に他の求人と差別化をする事が可能になります。
独自性の面では、求職者・応募者の側に立った視点が不可欠です。
農業求人の具体的なアピールポイントは?
農業求人で応募者に好まれるポイント、アピールしやすいポイントはどんな面か考えます。
小規模農業・個人事業者さんが募集する場合の事を考えて取り上げてみます。
需要が多いと思われる特定の時期や忙しい時にお手伝いとして協力してくれる人材の募集です。小規模事業者だからこそ好まれる点があるはずです。
小規模農業者のアルバイト募集でアピールしやすいポイント
- 出勤時間・出勤日数に融通が利く
- 少人数なのでアットホームな就業環境がイメージできる
- 仕事以外の経験も出来そうな印象が持てる
補足ですが、長期就業者、事業継承者等の採用を考える場合の募集では、上記に共通する部分とそうでない部分があります。
そして、募集の難しさも格段に上がります。
共通してアピールできるのは、アットホームな雰囲気や仕事以外での自然や体験できることの広がり。
しかし、その他の面では一般的な企業への就職と比較した場合に見劣りする事は否めないでしょう。収入や安定性の面です。
求人募集の内容を作成する際、ダブルワークでの就業等の提案、または将来独立の夢を持った農業希望者を想定してそこで活かせる経験などをアピールするのが良いでしょう。
就農希望者への募集情報を公開する際の注意点
募集の内容を考える時、大きくは二つのポイントに分けた視点で考えます。
- 就業条件などの必ず明示しなければならない項目のポイント
作業内容や就業時間、給与面の条件等であり法令上のルールもある事柄ですが、記載方法や詳細情報の伝え方で希望者の印象は大きく変わります。 - 条件面以外で伝えたいポイント(アピール点や農家さん側の希望)
『我が家ならでは』『わが農場ならでは』の応募者に好印象を与えるポイントはどこか。
就業条件等の作成・明示
募集している内容において、正確な条件の提示は当然ですが雇用者と労働者(農家さんと作業さん)の間で守らなくてはならないルールもある訳です。
インターネットを通じての募集であっても、当然そういった労働契約上のルールをクリアした上で募集する必要があります。
『難しいな』と思われるかも知れませんが、基本的な項目は募集内容の項目に従って入力していけば進める事が可能です。
また、不明な点は求人サイトのマニュアルやいその他インターネット、ハローワーク等で確認する事が出来ます。
条件以外の項目で採用に差がつきます
実は、条件面以外で伝えるべきポイント・アピールの仕方も重要です。
先の項目でアピール可能な項目を取り上げましたが、ここでは具体的な事例・記載方法をサンプルとして記載してみます。
- 野菜農家で朝が早い募集
→『通勤間の短時間でお小遣い稼ぎが出来てダブルワークに最適です』
→『時には自分で収穫した野菜で朝ごはんも食べられるかも?』
※時間の使い方を提案するような内容やちょっとしたサプライズも期待できる文言 - 依頼する回数が少ない、作業時間が短い募集
→『季節毎や月数日からでも大歓迎。空き時間を使って野菜収穫のお手伝い』
→『家庭菜園に活かせる経験してみませんか?』
※収入や待遇を前面に出すのではなく、趣味やコミュニケーションの一環としても考えて貰う。 - その他アピールに使える内容
→『休日はお子様同伴でのお手伝いも大歓迎』
→『就農を考える方は将来的な事業継承も相談可能』
→『就業日数・就業時間は柔軟な対応が可能です』
※柔軟な対応や希望者さん等にメリットのある表現が出来るなら記載するべきです。
例えば、募集する農家さんが野菜の生産を行っているのであれば、『規格外の野菜が貰えるかも??』なんて期待をする人も多いでしょう。
実際にそういった場面も多いハズですが、直接的な表現で『規格外の野菜譲ります』と記載するのは憚られる事もあるでしょう。また、『譲ります』と記載する事で約束事に受け取られても困りますよね。
そういったアピールポイントは、決められた条件の記載事項以外の場所で、農場や農園等職場の紹介等の文章にさりげなく盛り込んで記載すると好印象です。
求人掲載と管理
インターネットを通じた求人募集は、応募の対応も原則インターネット経由が中心です。
どうしてもその他の応募受付方法を優先したい場合には、募集の要項や備考欄に『ご応募はお電話(郵送)でお願いします』等の表示をするようにします。
ただし、インターネットでの募集である以上、その他方法での受付は応募自体の確率が下がるのは避けられません。
また、本気で人材募集を成功させたいと考えるなら適切な求人の管理が重要です。
掲載中の求人募集管理
折角考えて掲載した求人募集も応募者となる方の目に触れなければ意味がありません。
『農作業スタッフ募集』、『○○の収穫作業』等の農業に関わる募集情報を求めている人だけが求人を見るわけではありませんし、求人情報としてはその他多くの一般求人と同じように扱われます。
そこから自分で作成した求人情報を見てもらうためにはマメな管理が必要になります。
具体的に言うと、求人は募集終了までの期間、常に更新が必要になると思ってください。
使用する求人募集サイトにもよりますが、原則として新着求人の方が上位に表示されやすい傾向にあります。
それは、農業求人でも同様です。
通常は、情報を公開して一週間以内が最も反響があり、週間経過するとその他の多くの求人に埋もれてしまうと考えてください。
応募者対応の注意点
両親が現役農家の筆者。
専業で無くとも農業に関わる機会が多い中で感じる事があります。
それは『小規模農家さんは農業以外の事を知らなすぎる』という事。当然、それは素晴らしい事で、それだけ農業に専念してきた証だと思っています。
しかし、募集に関しては自分の理解が現在の世の中の常識と比較して正しいかどうかを冷静に見つめる必要があります。
農家さんだけじゃありません。専門家と言われる人は、専門外の事に疎い場合がありますので、まずは客観的に考える事から始めます。
農家で働きたい人にも色々なタイプがあります
農業求人を探している人にも複数のパターンがあります。まず、農業系の求人に応募してくれた人材には大きく分けて二つの階層がある事を知ってください。
一つ目が、長期的に就農を前提としている応募者さん。農家・農業に憧れて長く勤めたい、将来的に就農したいと考えているケース。
ただし、その場合でも必ずしも同じ農家さんで継続して経験を積みたいと考えている人ばかりではありません。何種類もの野菜生産を経験したいと考えていれば、一定の期間で他の農家さんに移るかも知れません。
また時には、自分に農業が向いているのか?を確かめるために応募されている人もいるかも知れないのです。
そして、二つ目のケース。具体的には、農業体験・経験をしてみたい。または、短期アルバイトの間隔で少しのお小遣いを稼ぎたいと考えているタイプです。
求人情報を見て応募される方は、長期就農よりもこちらのケースが多いと考えておきましょう。農業に憧れて働いてみたいと考えている人たちも沢山いますが、ほとんどの人は雇われたい訳じゃないんです。
経験をしてみたい。自分の都合に合わせて少しのお小遣いを稼ぎたい。
そんな気持ちで応募してくる人が多い事は理解して欲しいです。
そして、農作業の求人における時給は、世間の平均と比べても決して高くありません。
応募者さんが、アルバイトや派遣、工場の期間工などの経験が豊富な人であれば、一般企業などの就労経験がない農家さんより『勤め人』としての経験は豊富な訳です。
面接は人選する行為じゃありません
運よく求人に応募者の反応があったら、ここからが真剣勝負なのですが失敗する事が少なくありません。
例えば、『人材採用=人を選ぶ』という考え方は、現在の求人において正しくありません。
面接は、働きたい人と労働者が必要な雇用主のお見合いです。どちらかが立場が上という事はありません。お互いのニーズがマッチするかを確認するための場面なのです。
心のどこかで『雇ってやってやる立場なんだ』なんて思ってしまえば直ぐに相手に伝わります。
まして、ここで紹介しているのは、限られた時間や期間、そして予算の中で働いてくれるスタッフの募集です。
自分の知り合いがお手伝いとして農作業を手伝ってくれると言ってきた・・・その人に会うくらいのつもりが丁度良いのではないでしょうか。
そして、面接の対応には基本的なルールがあります。
アルバイト・パート・正社員などの雇用形態に関わらず、採用面接を行う上では知っておくほうがトラブルを避けられると思いますので不安がある場合には確認してみてください。
上記は厚労省のHPですが、職業安定所やその他求人サイト等でも簡単な紹介を確認する事が可能です。
農業人材の採用を成功させよう
ここまで少し難しい事も言いましたが、目的は農作業を手伝ってくれる人材の採用である事に変わりはありません。
無理をせず、出来る事から始めて丁寧な募集を行えば、きっと良い人材に出会う事が可能です。
ごく簡単にまとめるなら以下のような感じです。
農業人材の募集の仕方
まずは無料のインターネット求人情報を登録。
募集内容は、難しく取られないように簡潔でありながら、アピールできる部分はしっかりと。
条件は必ず明記しなければならない物も有るので忘れずに記載。
短期や期間限定の応募者さんは、労働者としてではなく手伝いに来てくれている知人のつもりで対応するといい感じ(笑)